家の中で靴を脱ぐのは、私たちにとって当たり前のこと。
しかし、この「上下足分離」の習慣は世界でも珍しく、
日本や東南アジアなど限られた地域に伝わる生活様式です。
靴を脱ぐことは、衛生的・健康的であるとともに、
くつろげるといった心理的な、効果もあります。
また、よく厚かましいことを「土足で踏み込むような…」と表現しますが、
日本人は“床に上がる”ことを謙虚でつつましい好意と捉え、
さまざまな作法を定めてきたようです。

それは長い間、貴族の住宅にだけ床があったこととも関係しているかもしれません。
このように、上下足分離という習慣から発達した日本の床は、
独特の住文化を培ってきました。
板間の暮らしからやがて畳が生まれ、同じ部屋で食べたり、寝たりできる、
日本ならではの融通性のある空間づくりが形成されてきたのです。

土間から藁敷き、板敷き、
そして畳へ

床の暮らしは長い間、貴族や僧侶、武士などの特権階級にのみ許される優雅なライフスタイルでした。
一般庶民が床で暮らすようになったのは、都市の町屋で近世以降、地方の田舎では明治以降で、
意外に歴史の浅い住居形式といえます。最初に作られた床は板敷き、いわゆるフローリングで、
やがて板の上に敷物を敷いて暮らすようになりました。

畳は一具多用の
機能的な生活用具

畳の語源「たたむ」からも分かるように、畳はもともと、折りたためるござのようなものだったと考えられて
います。厚みのある畳ができたのは平安時代以降。今日のように部屋中に敷かれるようになるのは、
武家の書院づくりになってから。畳は椅子にもベッドにもなる一具多用の家具として、日本の暮らしを
支えてきました。





いと、奥床し